「敬語」菊池康人

<話題の敬語>\<対話の敬語> 使う 使わない
使う 社長が出席なさいました 社長が出席なさった
使わない 社長が出席しました 社長が出席した
<話題の敬語>\<対話の敬語> 使う 使わない
使う どうなさいますか? どうなさる?
使わない どうしますか? どうする?


普通の意味での二人称
           二人称並み(相手の身内) 敬語上のII人称(相手側の領域の人物)
普通の意味での三人称 純粋の三人称・・・・・・・・・・・・敬語上のIII人称(どちらか一方の領域とはいえない人物)
           一人称並み(話手の身内) 敬語上のI人称(話手側の領域の人物)
普通の意味での一人称


敬語の<適用>のルール(一): 敬語上のI人称の人物を高めてはいけない。
敬語の<適用>のルール(二): 敬語上のIII人称の人物で、聞き手から見て高める対象とは思われないような人物を高めるのは、聞き手に対して失礼になる。
敬語の<適用>のルール(三): 聞き手から見て同等以下の人でも、話手がその人を高めることで結果的に聞き手のことも立てることになる場合は、その人を高めてよい。
敬語の<適用>のルール(四): 話手がニュートラルよりも低めることができる人物は、一般に、敬語上のI人称話に限られる。また、話手がそうするのは、聞き手がいるときに限られ、丁寧語を伴うのが普通である。

語形のまとめ

「お/ご〜になる」・「お/ご〜なさる」
「お」につづく「〜」は<和語動詞の連用形>、「ご」につづく「〜」は<漢語系の熟語>
「―なさる」
「―」は<サ変動詞「―する」の形が作れる語>
サ変以外 漢語A 漢語B 和語擬態語 外来語
お/ご〜になる ○お読みになる ○ご出席になる ×ご運転になる ×おはらはらになる ×おスケッチになる
お/ご〜なさる ○お読みなさる ○ご出席なさる ×ご運転なさる ×おはらはらなさる ×おスケッチなさる
―なさる △読みなさる ○出席なさる ○運転なさる ○はらはらなさる ○スケッチなさる
…(ら)れる ○読まれる ○出席される ○運転される ○はらはらされる ○スケッチされる

簡単/安全/自然で敬度も十分な尊敬語の使い方

サ変動詞(「―する」型の動詞) … 「―なさる」を使う (「お/ご」をつけず、「する」を「なさる」に変えればよい)
(例)運転なさる、ドライブなさる
サ変動詞以外(連用形「〜ます」) … 「お〜になる」を使う
(例)お乗りになる、お出かけになる

「……ことができる」の意の尊敬語

サ変動詞(「―する」型の動詞) … 「―なされる」(可能形)を使う (あるいは「〜なさることができる」)
サ変動詞以外(連用形「〜ます」) … 「お/ご〜になれる」(可能形)を使う

語形の整理 「お/ご〜くださる」・「お/ご〜いただく」

  • 書いてくれる --(「くれる」を敬語に)--> 書いてくださる --(「書いて」を敬語に)--> お書きになってくださる --(「になって」を除く)--> お書きくださる
  • 書いてもらう --(「もらう」を敬語に)--> 書いていただく --(「書いて」を敬語に)--> お書きになっていただく -->(「になって」を除く)--> お書きいただく

×「お/ご〜してくださる」 --> ○「お/ご〜くださる」
×「お/ご〜していただく」 --> ○「お/ご〜いただく」

特定形のまとめ

いらっしゃる・おいでになる -- 来る・行く・いる
お越しになる・お運びになる -- 来る(・行く)
見える・お見えになる -- 来る
おっしゃる -- 言う
ごらんになる -- 見る
(召し)あがる・お(召し)あがりになる -- 食べる・飲むなど
召す・お召しになる -- 着る、風邪を引くなど
お気に召す -- 気に入る
ご存知だ(否定はご存じない・ご存知でない) -- 知っている

あがる -- 訪ねるの意の謙譲語
うけたまわる -- 聞く、引き受ける・承諾する
お目にかかる -- 会う
お目にかける・ごらんに入れる -- 見せる
いただく・頂戴する
お/ご〜たまわる・お/ご〜にあずかる・お/ご〜(を)願う・お/ご〜を仰ぐ

尊敬語

一般形 -- ……(ら)れる・お/ご〜になる・―なさる・お/ご〜だ(です)・お/ご〜くださる
特定形 -- なさる・いらっしゃる・おっしゃる・くださる・召しあがる・ご存知だ(です)
主語を高める。 (例)この本、もうお読みになりましたか。/先生がスピーチをなさった。

謙譲語A

一般形 -- お/ご〜する・お/ご〜申し上げる
特定形 -- 申しあげる・存じあげる・さしあげる・いただく・伺う
補語(…を・…に)などを高め、主語<典型的にはI人称>を補語よりも低く位置づける。
(例)明日お訪ねしても(伺っても)よろしいですか?/わたしが先生にご説明した(ご説明申しあげた)。

謙譲語B

一般形 -- ―いたす
特定形 -- いたす・申す・まいる・存じる
主語を低め、聞き手への丁重さを示す。 (例)先日、京都へ出張いたしました(まいりました)。

丁重語

謙譲語Bを、とくに主語を低めるわけではなく、単に聞き手に対する丁重さをあらわすためだけに使う用法。
(例)無効から中学生が/車がまいりました。
ただし、主語は<高める必要のないIII人称>でなければならず、II人称や高めるべきIII人称では不可。
(例)×あなたは/先生は、その会にまいりますか。

謙譲語AB

一般形 -- お/ご〜いたす
補語を高め、主語を低め、聞き手への丁重さを示す。
(例)ご案内いたしましょう。

おかしやすい誤り

「お/ご〜する」を尊敬語として使う
「お/ご〜される」※規範的には正しいと認められていない
「お/ご〜してくださる(ください)」「お/ご〜していただく」※一般的に誤り
「<高めるべき人物>は(が)…ていただく」「<高めるべき人物>は(が)…お/ご〜いただく」
→「<高めるべき人物>に…ていただく」「<高めるべき人物>に…お/ご〜いただく」あるいは
 「<高めるべき人物>は(が)…てくださる」「<高めるべき人物>は(が)…お/ご〜くださる」